21V電動ドリルバッテリーパックが充電されないときのFETトラブル診断

充電器のランプが緑色に点灯しているにもかかわらず、21Vリチウムイオンバッテリーパックが充電されない、あるいはドリルが動作しないといった問題は、多くの場合バッテリーマネジメントシステム(BMS)の内部に原因があります。本記事では、FETやBMSの異常をマルチメーターで診断する方法について詳しく解説します。

 

 

FETの基本的な動作原理

BMS内部には通常2つのFET(電界効果トランジスタ)があり、それぞれ充電と放電を制御しています。FETはゲートに電圧が印加されることでスイッチが閉じ、電流が流れるようになります。

  • 充電用FET:充電器からのマイナスライン(GND)を制御
  • 放電用FET:ドリルや負荷側へのマイナスラインを制御

FETのゲートに通常10V前後の電圧が供給されるとスイッチがオンになります。ゲート電圧がゼロの場合、FETは遮断されたままです。

 

 

FETゲート電圧の測定方法

マルチメーターを使って以下のように測定します:

  • 黒いリードをバッテリーマイナス(B−)に接続
  • 赤いリードを各FETのゲートに接触させて電圧を確認

10V前後の電圧があればFETはオン、0Vならオフの状態です。正常なバッテリーパックとの比較により、異常を特定できます。

「ドリルバッテリーパックのBMSボードにおけるFETゲート電圧測定と診断方法を示す配線図」

ドレインとソースの確認

FETのソースはB−(グランド)に接続されており、FETがオンの状態ではドレインに全セル合計の電圧(21V)が現れます。0Vの場合、FETの破損またはオフ状態と考えられます。

 

 

よくある異常と確認ポイント

  • ゲート電圧があってもドレイン電圧が0V → FETの故障
  • ゲート電圧が出力されない → コントローラーICの異常の可能性
  • 各セルの電圧(B1~B5)がすべて2.5V以上か確認する

まとめ

「死んだ」バッテリーパックを復旧するには、マルチメーターでゲート、ドレイン、ソースの電圧をチェックすることが有効です。正常なパックと比較することで、FET、IC、セルのどこに問題があるのかを絞り込むことができます。